注意:今日のブログは、イメージが伝わるようにかなり大雑把な説明になっています。用語の使い方など、厳密さよりもわかりやすさを優先しておりますのでご容赦を。mm
みなさん、核酸医薬ってご存知ですか? 核酸医薬というのは、人間の遺伝子に直接働きかける新しい薬です。 今まで治療が困難だった病気に対して、効果のある薬が作れる可能性があり、高い期待が寄せられています。 すでに国内でも実用化段階まで進んでおり、例えば遺伝性疾患のひとつで難病指定されている脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として、「スピンラザ」という核酸医薬が承認され、治療に使われ始めています。また、つい先週の6月18日にやはり遺伝性の難病であるトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)の治療薬として「オンパットロ」が承認されたところです。
では、具体的に核酸医薬がどのように人間の遺伝子に働きかけるのか説明していきましょう。
人間の遺伝子はATCGという4種類の塩基が連なったDNAという物質から出来ています。 それぞれの塩基にはくっつきやすいペアとなる塩基があり、それらが対になった2重らせん構造になっています。 (人間の遺伝子の全体はゲノムとよび、約30億個の塩基の配列で出来ています。) そして、DNAのなかの必要な部分がRNAという物質にたくさんコピーされ、さまざまなタンパク質が作られます。 核酸医薬は、このRNAの塩基配列の一部に作用し、タンパク質が作られるのを阻害したります。 これによって、病気の原因となっている特定のタンパク質を減らすことができるのです。
このように、高い可能性を秘めた核酸医薬なのですが、残念ながら副作用が起きる場合があります。 それは、核酸医薬が「似ている塩基配列」にも作用してしまうことがあるためです。 「似ている塩基配列」に核酸医薬が作用してしまうと、病気の原因とは関係のないタンパク質まで減らしてしまい、最悪の場合、重い副作用を起こす可能性があります。
そのため、核酸医薬を開発するときには、副作用のリスクを減らすために、病気の原因となっている遺伝子の塩基配列のなかから、なるべく他の遺伝子の塩基配列と似たものがない部分を探す必要があります。 しかしながら、人間の遺伝子は約30億塩基もあるため、「似ている塩基配列」を探すのは非常に大変です。 (例えば、20塩基の配列のなかの1塩基だけ違っている塩基配列を探すだけでも、20 x 3回、挿入と削除も考慮するとそれ以上の塩基配列を探さなければなりません。)
レトリバでは、「似ている塩基配列」を探す、という部分に自然言語処理技術を応用し、遺伝子のあいまい検索エンジンを開発しています。 この遺伝子のあいまい検索エンジンは、ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)の提供しているサービス「GGGenome(ゲゲゲノム)」のバックエンドで使われています。
■GGGenome
https://gggenome.dbcls.jp/
GGGenomeは、核酸医薬の開発や、ゲノム編集などで広く使われている公共サービスなのですが、企業様から社内のシステムとして使用したいという要望がありまして、オンプレミス版をレトリバから提供する予定になっています。 7/10, 11, 12に大阪で開かれる、核酸医薬学会でデモを行いますので、是非見に来てください!
また、核酸医薬について詳しく知りたい方は、『実験医学』2019年1月号の特集をご覧ください! https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/book/9784758125154/