こんにちは。製品企画部の 平石です。
今回は、弊社が得意とする自然言語処理を用いて某保険代理店様でVoC(お客様の声)分析を実施した事例を以下の順でお話させて頂きます。
そもそもなんでVoC分析
当たり前ですが分析はあくまで手段なので、分析する事が目的ではありません。 では何故分析する事になったのかというと以下のような背景がありました。
- コールセンターにて年間10万件以上の電話を受けていた(年間10万件のお客様の声(VoC))
- 頂いている年間10万件のVoCを分析する事には元々興味があったが、どう分析するかが明確でなく着手出来ていなかった
- 一方、コールセンターでは業務改善すべく、ボットをはじめいくつかの施策を試しているが手探り感があった
- 従って、例えばVoC分析から業務改善のきっかけが見つかるのであれば大いに興味があるという状況であった
ボットは問合せの一部を人に代わり機械が対応するという仕組みですが、上手くボットが回答し役立つには、まず問合せに対するFAQが整備されている事が大前提となります。
つまり、問合せに対応するFAQ整備が必要なのですが、そのためにはまず、どのような問合せを頂いているかを把握する必要があります。このFAQ整備の為に問合せ理由を把握するVoC分析というのがまず考えられます。
FAQ整備の目的以外でのVoC分析としては、頂いている問合せの根本理由を把握し、サービス改善する事でそもそもの問合せ発生原因を抑え、問合せ発生を削減する事も考えられます。つまり問合せ削減の為に問合せ理由を把握するVoC分析も考えられます。
以上の2点から、こちらの保険代理店様では”やってみよう”という決断を下されました。
具体的にはどう分析した?(どういう手法で何に取り組んだ?)
次に、どう分析したかという事に関しては、弊社の分析AI「YOSHINA」で用いている手法(教師無し学習)にて 「課題抽出」 というタスクに取り組みました。
実は、各オぺレーターの残した記録には、どのような種類の問合せであるかという分類フラグも付与されていました。従って、例えば損害保険に関する問合せでは、自動車保険の更改で何件問合せを頂いているという事は把握出来ている状態でした。
しかし更改の問合せを受けている理由に関してはわからないので、具体的にどういう対策を打つべきか(FAQを改善する? サービスを改善する?)が進められていない状況でした。
そこで、どのような問合せが多いのか、お客様の要望は何かを抽出し、オペレーション改善やサービス改善へつなげられる候補を発見する事を目的とする 「課題抽出」 を実施する事になりました。
「課題抽出」 を実施する際に分析AI「YOSHINA」の技術を使っていますが、使った理由はシンプルに分析対象の量が多いからです。
AIが進化しているとはいえ、データ分析において、データの解釈・判断、打つべき施策の検討は人間の領域となります。
数十件ぐらいのデータであれば人間が全て目を通して把握する事も可能ですが、万の単位を超すような件数となると流石にそうもいきません(無理ゲーですね、、、)。
ここでAIのような機械の力を借りる事が必要となります。
AIが得意とするものとして、例えば似たようなもので分けるとか、似たものに共通するキーワードを抽出したり関係性を示すという処理があります。
前者は、データの集合にどのような”塊”が存在するかを把握するのに役立ち、後者はその”塊”がどのような特徴を持つかというのを把握するのに役立ちます。
分析AI「YOSHINA」は全データの中から人間が見るべきデータやキーワードを独自の処理で分かり易く示しますので、データの解釈・判断に役立ちます。
つまり、データの特徴や見るべきデータをAIが提示します。結果、人間は全データを自身で見るという無理ゲーからは解放され、データに基づく施策検討が可能となります。
分析する事でどういう事がわかった?(どんないいことがあった?)
今回は約3万件のデータでVoC分析を実施した結果、FAQ改善につながる課題、 オペレーション改善に繋がる課題がそれぞれ数十件見つかりました。
FAQ改善につながるものとして、まず手続き的なものが多く見つかりました。
住所変更のようなものや、特約付帯付加等の手続きに関するものです。
手続きがどこで引っかかっているが分かれば、お客様向けの適切なFAQ整備と周知にて、お客様が問合せするまでもないという状況が作れます。
これはFAQ改善としては取り組みやすいテーマかもしれません。
また、ドライブレコーダー付きの保険というものが出始めた時期だったため、これに関する問い合わせが有りましたが、新しいテーマであった為オペレーター向けのFAQは未整備の状況でした。
ここでドライブレコーダーに関する問い合わせを分析した結果、こちらの保険代理店様からは、お客様がこの新しい保険に関して何を知りたくて電話してきているかという事が分かったのでFAQ整備を一気に進められるとのご評価を頂きました。
一方、オペレーション改善の課題として興味深いものとして書類に関するものが有りました。簡単に言えば書類の署名欄がよくわからないというシンプルな内容で、引っかかりが発生している個所がどこなのかがわかりさえすれば、付箋紙やマーカー、記入例等で分かり易くするという対策が可能です。つまりこれも解決が難しい問題ではないのですが、どこに問題が有るか?に気付く事が出来るかが重要という話です。
今回は分析を通じ、どいういう書類で引っかかっているかが分かったので対策が可能となりました。
尚、現在こちらの保険代理店様は、施策の実行と検証のフェーズに移行されています。
- 得られた分析結果を元にFAQの再整備やお客様へのご案内の改善等の施策の実行
- 施策実施の結果、問合せ傾向がどう変わるか
今回の取組を振り返ると、分析で導かれた事は、必ずしもコールセンターの現場で全く未知の話であったわけではありません。しかしながら、今までは対策を打つ或いは情報を活用するという施策には繋がっていませんでしたが今回は施策の実行に繋がりました。
何故、今回は施策の実行に繋がったかというと、今まで現場の各オペレーターに感覚として把握されるに留まっていた事が、分析の結果、可視化・共有され、会社としての検討の俎上に上げる事が可能となったからです。
このように感覚が可視化され実行に繋がるという事も分析の効果と言えます。
最後に
世間では”お客様の声(VoC)”は”宝の山”とよく表現されます。
(Googleで ”お客様の声” ”宝の山” と2つのキーワードを入れて検索すると242,000,000件ヒットしました。)
しかしこの宝の山を活用しているかというと、今回の保険代理店様のように、活用はこれからという会社様が殆ではないかと思います。
確かにテキスト分析を全て自力でやろうとすると大変かもしれません。
しかし、YOSHINAのように、データを塊に分けたり塊の特徴を示すというところをAIがやってくれるのであれば、データを本当の”宝の山”とする事も十分に可能ではないでしょうか?
長文最後まで読んで頂き有難うございます。
お客様の声の分析(VoC分析)にご興味をお持ちの方はこちらからお問い合わせください。
(宝の山を探すパーティーのメンバーに加えて頂ける日を楽しみにしています。)